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鍼灸と腰痛、鍼灸と自律神経に関する様々な症状

 

鍼灸師 濱野英太郎

4:鍼灸と自律神経に関する様々な症状

 

前回、ぎっくり腰に対する東洋医学的な捉え方について心の状態、そしてその人が置かれていた状況も含めて、身体の各要素の働きと、そのネットワークの全体のバランスが“ぎっくり腰”という症状と関連している事について書きました。

 

今回のテーマ「自律神経に関わる症状」のように、身体の「機能」、「働き」や全身に現れるような症状は、東洋医学的な鍼灸の得意分野と言えます。

 

頭痛、動悸、めまい、疲労倦怠感、不眠、食欲低下、下痢、便秘、肩こり、うつ症状、不安感などの自律神経に関わる症状は、いわゆる“自律神経失調症”と呼ばれています。

 

少し体の神経系統のお話をしますと、中枢神経系と言われる脳・脊髄から繋がる神経系には、体性神経(運動神経、知覚神経)と自律神経があります。

体性神経の中の運動神経は、脳からの信号を動かしたい筋肉へ伝達する神経です。また、知覚神経は、視覚、嗅覚、触覚などの感覚器官と繋がる神経です。

 

そして自律神経ですが、生命活動を行うのに必要な信号を伝える神経といえます。その名が示す通り、身体の主人の意思に関係なく自律的に働きます。たとえば、心臓の拍動、血管の収縮、汗腺の開閉、内蔵の働きなど。そして、自律神経には、アクセルとブレーキの働きをする交感神経と副交感神経があります。

 

簡単にいえば、交感神経は、活動と戦闘モードの神経、副交感神経はリラックスと休息モードの神経になります。

 

 

健康体では、その二つの神経が状況に合わせてそれぞれ自然に切り替わってくれます。

 

昼間は交感神経が優位の状態で心身の活動が活発になり、夜になると副交感神経が優位となり、だんだん眠くなって身体は休息モードに入ります。

我々の身体はこのように、緊張とリラックスを交互に繰り返す事で生命活動を維持できるのです。

 

しかし、そのスイッチが上手に働かなくなって「失調」してしまうと、上記のような様々な身体の不調や症状が現れてきます。

 

その原因として、生活環境の変化、精神的ストレスや食生活、生活習慣の乱れなどが挙げられます。忙しい現代社会では、主に交感神経が優位になる事が多くなります。そして、インターネット技術の発達により、多くの情報を処理できるようになったことで、今まで以上に脳そしてPCやスマホの長時間使用によって、視神経が過度に酷使されるために起こるのではないかと考えられます。この件はまた別の章でコンピューターやスマホ作業と鍼灸治療で述べたいと思います。

東洋医学では五行でいう「木(もく)=肝」のエネルギーが神経系を担っています。「木」のエネルギーは、行動力の源であり、肝臓にも関係しますが、目や筋(すじ)、腱に関わりが深く、そして上に上昇するという特徴が有ります。長時間に渡って、筋肉を緊張させ、視神経を酷使し、大脳をフルに活動させていると、身体の上部に気が偏り、熱を帯びてきます。

 

それによって、肩こりやめまい、頭痛、眼精疲労、不眠などの症状が起こってくるという訳です。

 

また、それが極限に達すると逆転現象が起こり、何もやる気の出ないうつ症状や倦怠感に進展していきます。

 

東洋医学的な鍼灸治療では、「気」が流れるルートである経絡をみて治療してゆくので、「肝経」と呼ばれる経絡とそれに関わる「腎経」などの経絡の乱れを良く診て、正常に戻るように全身のバランスを回復させてゆきます。

 

症状を緩和するによく使われるのは、気を下げる作用のある「百会(ひゃくえ)」、目の疲れを取る「晴明(めい)」、「さん竹(ちく)」、「太陽(たいよう)」。

肝経を調整する「曲泉(きょくせん)」「太衝(たいしょう)」。各内蔵に関する背骨両脇に並ぶ中の一つ「肝兪穴(ゆけつ)」などがあります。

 

仕事中はなるべく休み時間を取り、視線を遠くに向けたり、目の周りをマッサージするのもいいでしょう。寝る前は、軽い体操やお風呂に入るなどリラックスしてからお休みになると良いかと思います。

 

次回は、婦人科の疾患について見てゆきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

次回:東洋医学的な 鍼灸と婦人病

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